精神科の主な看護業務と注意点について

精神科における看護では、手術や精密検査など特殊なスキルを求められる場面がなく、カウンセリングなどが業務の中心となり、比較的楽な診療科だと思う人もいるかもしれません。残業がほとんどないことも、精神科の特徴といえるでしょう。
しかし、現場では、トイレや入浴といった場面でセルフケアできない患者も多く、排泄物の後始末や患者の全身清拭のほか、入浴介助も行うことがあります。認知症状の進んだ患者に対して、点滴や採血をはじめ、吸引や酸素療法などのケアを施すことも珍しくありません。
したがって、精神科に勤務しても、内科や外科など一般的な診療科で行われる医療行為を施す機会はあります。

また、患者と対面式でカウンセリングを行う際には、患者の暴言や暴力に対する安全管理が不可欠です。情緒不安定な患者は、看護師が特段刺激するようなことをいわなくてもちょっとしたきっかけで激昂し、攻撃的な態度に出ることがあります。これは、問診やカウンセリングだけでなく、注射や点滴のように痛みを伴う医療行為の時にも起こり得ることです。危険性がある場合には複数の看護師で対応したり、屈強な男性看護師のサポートを得たりするなど、対策が欠かせません。
薬物療法が中心となる場合は、患者の言葉に耳を傾け、副作用を最小限に留めるよう最適な薬物を選択することも看護師の役割です。抗うつ剤や抗不安薬は、さまざまな種類があり、患者にとってどの薬物が最適なものか判断することは医師にとっても容易ではありません。患者は医師より看護師に本音を語りやすいといわれているため、医師と患者のパイプ役として看護師が活躍することになるでしょう。